第4章 静謐に佇む
「君のあるじは今日から私だ。
君の正義であり、君の目的であり、結果、生き甲斐。
……とでも思ってくれ給え。」
森の言葉に
暗殺者が、眉を寄せて笑った。
嘲るように。
「生き甲斐?
生き甲斐というのは
趣味だとか、特技だとか、
そのような言葉で片付けられるものではない。
それが無いと生きていけないという方向性を指す。」
暗殺者の言葉も最もだった。
「ならば、君の道しるべが、私だ。」
森が、白い着物を纏う目の前の暗殺者にそう言う。
「…ふむん。
妾の一番は、何があろうとも貴様という訳さね。
結局 帰ってくる場所が指定されただけか。
いいだろう。
人に仕えるのは慣れている。」
正義など知らない。
騎士道など知らない。
ただただ、あるじ殿に利さえあれ。
貴様が望むだけ
妾は貴様に最後まで尽くそう。
卑怯上等、卑劣上等。
そうだとも、暗殺者というのはそういうものであろうよ。
世界屈指の暗殺者と謳われた 『それ』 が
あるじを得た……もう、7年も前のこと。