第28章 La Vierge…II
「……ッそんなこと、出来るわけ––––ッ!」
「だから、真冬も言い淀んでいた。
考えを言葉にする、それだけのことなのに負う責任が重すぎるからな」
どうしたらそんな考えが出来る。
そんなの人間の思考として破綻している。
街 ひとつを炎で焼け落ちさせる気か。
確かに、他の者は亡くなる。
でも、でもバージンキラーならば……
「……ねェ、社長。
真冬、それを言ってから出掛けたんだよね?」
「 ? 嗚呼」
乱歩がよいしょ、と急に立ち上がった。
外套を肩に羽織り、鞄を掴む。
「乱歩さん? どちらに……」
「この僕なら今の真冬の考えていること、判るから。
だから手伝いに行くだけ。
これはさっさと手を打たないと不味いやつだよ」
ニッと眼鏡の下で浮かべた笑みは、不敵だった。
翠玉の瞳は ただ炯々とし、
恐ろしいほどに速く回っている頭の中の内容を順番に組み立ててゆく。
「ちょっと 司法省の方に出向いてくるね〜」
「ちょ、乱歩さん。妾も行くよ」
ぱたぱたと脚を鳴らして 宿舎を出た乱歩を
慌てて与謝野女医が追いかけた。