第27章 La Vierge…I
「ただいま」
「戻りました。」
軽く息抜き程度に 早暁の星見をしてから、二人は戻って来た。
最上階にある大会議室のドアを菜穂子が両手で開ければ、
真正面に仁王立ちするは中也。
顔が怖い。
「良い度胸してンなぁ……手前ェら……」
肩を震わせて今にも切れそうだ、三島があははと笑い飛ばして
中也の横を通り過ぎようとしたが。
「三島ァ……
勝手に外出て発作が起きたらどうしてたンだ?あぁ?」
「いやほら、そこはそれ、上橋が隣にいたから大丈夫」
両肩を掴まれて三島が苦笑いを浮かべ続ける。
両手を軽く掲げて降参の意味合い。
対して中也は不満そうに 憤慨していた。
これが三島への心配心なのだというのは、周知の事実であるが。
「菜穂子も、あんまこいつを甘やかすな」
「は。甘やかしている自覚は有りませんが。」
無表情で切り返す菜穂子にも感じるところがあるのか
中也がはがしがしと頭を掻いた。
「兎に角––––!」
結局、中也が折れるしかなかった。
三島相手だといつもそう。
彼の、何も無い紺碧の瞳を見つめ続けることは出来ない。
はあと呆れ混じりのため息を吐いた後に、中也が言う。
「そろそろ本部とも通信が繋がる。
これで何らかの進歩もあるだろうよ」
あるといいけれどね、と三島の脳を掠めたそれは、呪いのようだった。