第27章 La Vierge…I
「えっ? はい、すぐに準備を。」
「嗚呼、鍵だけ閉めれば大丈夫だから。
さ、行こう」
さっと執務机から鍵を取り上げ、黒外套を翻す三島幹部。
ひらりと舞ったレースを追いかける。
「そろそろ冷えるだろうから」
そう言った三島幹部が、広大な幹部部屋の
出入り口に立ててあるコートハンガーから上着を取った。
それを受け取る。
花の香りが立ち昇って、つい深呼吸をしてしまいそうになる。
「星見ですか?」
「そう。
ほら、こうして引き篭っている僕が外に放されている機会なんて
滅多にないからね。」
放されている、三島幹部の治療をしているポートマフィアに
【仮面の告白】を封じられているというのも理由の一つではありますが……
「僕のような特A級危険異能力者が
外に出ることを隠すことなくあからさまに言ってくる組織がいるのは事実だから。」
明日世界が終わるかもしれない、空が落ちてくるかもしれない。
そんな事が出来るのは特A級危険異能力者だけだ。
だったら制してしまえばいい、御してしまえばいい。
「だから原因分子になりそうな特A級は
目の届く所に閉じ込めて手綱を握っておきたい、って考えだろう。」