第26章 Scarlet Heart…III
「ふうん……、そんなにいたんですね……バージンキラー」
「みたいだねぇ。社長も国木田も、生傷のひどいことったらさぁ」
一方、医務室代わりの 今福沢たちがいる和室の隣の部屋。
武装探偵社の新人である太宰治、
そして彼とその部屋にいるのは江戸川乱歩だ。
「そういえば乱歩さん––––」
「んー?なーに?」
ずず、とお茶を啜り乱歩が首を傾ぐ。
その目線は太宰ではなく、この辺りの土地の地図に向けられている。
これは、昼間のあの後、市役所に行って貰ったものだ……
「武装探偵社にいる、残り一人の社員のひとは、ここにいますか?」
薄い笑みを浮かべる太宰の顔は怖いものではないけれど
でもそこに、甘やかさはない。
話を逸らしてはいけなさそうな、そんな笑み。
乱歩のために武装探偵社はある。
乱歩の異能力……【超推理】を
活躍させられる環境を作らねばならなかった。
武装探偵社がようやく異能力関係においては便利屋として
このヨコハマに、その名が知れ渡った……
そんな折に乱歩が拾ってきたのが、彼女だった。
「あー……」
乱歩がごろりと寝返りをうち、ふあっと欠伸を漏らす。
「……うん、いるんじゃない。
でも社長と国木田のお見舞いしてるから……
顔を見れるのはまた明日だと思うけどね?」