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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第26章 Scarlet Heart…III




「ぷ。……ふふ、ははは。」


面白そうに華奢な肩を揺らして、くすくすと笑う真冬。




「嗚呼……なにを言い出すかと思えば……それかや。

だから、妾は貴殿の伴侶だと言ってしまってもいいのだけれど」




先に電話で言っていた言葉だ。

聞いていた言葉。



「真冬がそれでいいのなら」

「妾はあるじ殿の意向に沿うまでさね」




挑戦的に目を光らせる真冬の言葉。


2年前からずっと留まり続けたこの現状を、今の一瞬で塗り替えてしまう言葉。




変わらない真冬に ふっと笑みを漏らした社長が

その細い体を搔き抱いた。



おお、と与謝野女医がわざとらしく目を丸くし、

国木田が顔を逸らすという初な反応を見せた。





「あるじ殿。福沢殿。

前にも言ったと思うたが、妾は……福沢殿の刃だ。
存分に、この身を使い捨ててくれて良いのさ。」



真冬は一介の暗殺者で、今は偶々福沢という主に仕えているだけのこと。

それは一時の変化であって、普遍的なものではないのだから……





だから、と真冬が身体を離して福沢に跪いた。


頭を下げて、噛みしめるかのように言う。





「妾に魅入られた貴殿の運命を、

妾に託してくれるか」




懐かしい感覚だった。

2年前のあの寒い冬の夜。




乱歩が拾ってきた真っ白だった彼女。





「私と共に、最後まで来てくれるのならば……

貴公の運命、この身が預ろう」




福沢がもう一度 真冬の手を取った。

華奢で小さくて、ナイフを振るうには似合わない、女の子の指先。




冠位を捨て、真綿の名を捨て、今の自分がきっと今までで一番……


なにも持っていない無力な自分。






「この身、この剣技、あるじ殿の御許に」



あの日を忘れることがないように。

今一度、全く同じ言葉で貴方に誓う。





この命が尽きるまで、貴方の物と成りましょう。



避けようのない死が、二人を別つそのときまで。



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