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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第26章 Scarlet Heart…III


獣の咆哮が闇夜に響き渡り、しばらくの後、こだまして消えた。




「……何だ、今のは……」


今までとは違う符丁だということくらいは判る。



「……ハイエナですね」


国木田の相手をしていた獣一体が

吼えて即座に踵を返し、菜穂子の方へと舞い戻る。





「……まもなく、私達が立てる音に引き寄せられた虫がやって来ますので。

今夜はここまでで失礼致します。」



獣に騎乗してからそう言って、

呆気なく民家の屋根を飛ぶように駆けて行ってしまった。





「……虫?」



耳を澄ませれば、パトカーのサイレンが微かに聞こえて来た。

さすが獣の超聴力。



真冬は一キロ先に落ちた針の音が判るだとか言われてるが、

あの獣も規格外の破壊力を持つ……




「……本来の目的は達成したな。帰還しよう。」

「はい。お怪我はありませんか、社長」


国木田が手帳をしまい、空になった影を一瞥した。




「無事だ。」

「この三体は如何しましょう」

「軍警に引き渡そう」


妥当な判断だ。






「それにしても……

ポートマフィアに、あのような手練れの獣遣いが居たとは……」


国木田が臍を噛む。



一人では敵わなかったであろう相手。




黙々と仕事をこなす、あの冷めた瞳の温度は


闇に潜み生きる者の冷たさだ。
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