第25章 Scarlet Heart…II
「おーい三島?一応首尾よく回収したけど」
黒い車の中には、起きていると面倒なので眠らせた軍警がいる。
眠らせた手段を問うのは野暮ってモンだ。
すごく落ち着かない。
電話の向こう、三島は理事長室にいるのだろう。
中也と菜穂子は病院のロータリーにいた。
……その三島が、本当は理事長室にいない事は知る由もなく。
「にしても、なンで回収させたんだ?情報漏洩防止か?」
《いや、それもあるけどね。上橋は?》
「他の組織に盗られると面倒だからでは」
《二人とも言ってること同じだ》
電話の向こう、可笑しそうにくすくすと笑う三島が予想出来た。
《今回のこの一件は、僕たちポートマフィアだけではなくて……
他の一般異能企業も助力しているだろう?》
「あァ……
でも、この無防備に寝てやがる軍警が
この警察病院に搬送されたことくらい、政府が知らせただろうよ」
だから、他の組織に盗られることを危惧して俺たちに向かわせたのだと思っていた。
《そうだね。先ほど通達が来ていたよ。
たぶん二人にも来るよ、そろそろ》
三島の予想の通りに、電話中に菜穂子が部下の黒服から紙を受け取っていた。
「今きた」
《言ったそばからだ》
内容は、今回襲われた唯一の男の生存者である軍警が
警察病院に運ばれ入院している、という旨のもの。
伝わるのが遅すぎる。
すでにその軍警は退院し、俺たちに拘束されていると言うのに。
「でもよ、そうしたらこっちの足取りなんて
すぐバレそうなんだけどな?」
《それは、この文面だと判りにくいからラッキーだよね》
……ン?
《……?
話が噛み合ってないね?
僕の言う警察病院と、中也の思っている警察病院はまったく別物だよ?》