第25章 Scarlet Heart…II
「……そういや、あいつどこ行ったんだ?」
「三島幹部ですか?
あの方なら、急ぎの用事と仰っていましたが……」
菜穂子が水差しと布巾を手に取り、
中也のウォーターグラスに注いだ。
部屋の色調が暗赤だからか、注がれた水が血のようだった。
「急ぎ……ねェ。
……どうせ、こっちの知らねェところで何か手数増やしてンだろ。
あ、昼にはあいつと合流するから 出られる準備しておけ」
「はい」
そのまま下がり、食器を片してゆく。
「昨日の、三島からの頼みって何してきたンだ?」
「はい。
三島幹部名義で 少々、司法省の方へ出向いておりました」
「は? 三島が?《ウォッチャー》連中に?」
中也が訳判らないという顔をする。
菜穂子には、そんな顔をする理由がいまいち判らない。
「確かにポートマフィアと政府機関は仲が悪いですが……」
「いや、違うンだよ。
あいつも色々あってな……」
嗚呼、一線だ。
目に見えてもおかしくない境界線。
中原幹部と太宰幹部、真綿様と三島幹部。
この4名の昔のことを
私は深く知らない……