第24章 Scarlet Heart…I
「な––––」
「大きい……!?」
否、大きいのでない。
大き過ぎる。
時速三百キロだなんて速さ、こちらはすぐに捕捉された。
月を背にして獣が呻る。
速さも、そして重量、体高さえ
軽くトラックは越している。
動物園の虎や獅子など可愛いものだ……
「……っ」
「良いか国木田。目を見るな。そのまま後ろに退がれ」
「はい」
青く炯々と煌めく 獣の瞳は、
こちらを視線だけで殺そうとし、制そうとする。
【–––––……】
「…………」
獣も、その乗り手も 一言すら発さない。
というか、乗り手……?
「社長、この獣は……!」
「嗚呼……異能力だな」
鋭利に並んだ牙の隙間から 低い咆哮を響かせながら、
一人と一体は動かない。
「……敵……?」
乗り手が喉を震わせたかと思うと、
耳にインカムが装備されているのか……
こちらから目を離さずに、誰かの指示を仰いでいるのが判った。