第24章 Scarlet Heart…I
「––––ッ」
真上に振り抜かれた刃が縦に滑ってきた。
横へと転がるようにすり抜けたバージンキラーの動きに合わせて
左手を添え、刀を真横に突き出す。
対象の首を刃渡りで搔き切る剣技である。
社長も割と、真剣なだけに真剣で、鉈とは雖も真剣勝負だ。
紙一重で身を反らし避けたバージンキラーの、出ている方の足を払う。
体捨の一つ、蹴手繰りを嗾けて
内に押し込むのではなく外へと払い退けた。
前のめりに身体を崩したバージンキラーの頸椎目掛けて、
肩を押さえ込み刃を振るう。
「––––、––––……!」
頸動脈を切られると、人体は上でも横でもなく
斜め上に血を噴き出す。
夜半のブロック塀に、血が噴水のように辺り一面を真っ赤に濡らした。
「––––武装探偵社憲章……
『武力で以つて心身が脅かされた場合、
速やかに武力でそれを行使してきた対象を制する権利を有する』」
急迫不正の侵害を排除する、武装探偵社が掲げている典範……
ぱちんと音を立てて、刀を鞘へと仕舞った。
払い退けた血が放射状に撤布される。
「相手が悪かった」