第24章 Scarlet Heart…I
(いやいや……やらないよ、私。
あの彼と殺り合うのは……)
かつて自分が身を置いていたポートマフィア。
その時に出会った彼、三島と自分は似通う思考形式を持つものの…
でも矢張り彼とは考え方が世界一つ分乖離しており、似ているようで、全く違う……かもしれない。
「仕方ないね。真冬はこの事……」
「嗚呼、ですが、今日の朝に退院した方から、
『武装探偵社』様宛にこれを預かっております」
受付嬢のその声に、乱歩たちがくるりと国木田を振り向いた。
何やら封筒を受け取っている。
先日彼女に依頼だと渡したあの茶封筒と同じやつだ。
乱歩にさえ意味が通じればいいと思ったのか。
「……これは咎められなかったのですか?」
「はい、あくまでも武装探偵社様宛にございますので、とお伝え下さいとのことです。その女性から……」
真冬はこの事態を見越していたのか。
「国木田、中身は?」
「ありがたい……、警察官の男の聴取内容のデータです」
大きな茶封筒にひとつきり、手のひらサイズの小さなデータ。
コンパクト収納式の、小さいサイズがもう一つ半分ほどにまでなれるようなメモリー。
なんと言うか、不恰好である。
手持ち無沙汰になりそうだ。
「国木田ァ、ちょっとかーして」
「えっ、乱歩さん」
パッと茶封筒を上から掻っ攫われ、乱歩がべりべりと封筒を破き始める。
病院のエントランスには紙が裂ける音が
空気を読まず大きく響いた。
「この封筒をそのまま使うとは、矢張り真冬は判っているじゃないか!
いや、判っていなかったら打つ手は限られていたんだけどね!」
それでも手段はあったんですか、と突っ込む人はいないようだ。
「ほら、二重構造!」
紐を引いて二回すり替える仕組みになっているこの封筒の謀略は、極めてシンプルで極めて露見しにくい。
重役に渡すものと同じだ。
「真冬のこっちのメモリーはフェイクだ。本命は、この紙の資料だね」