第23章 Garden of Daydream…IV
「……それでも、私は三島幹部が好きです」
「意味がないと判っているのに?」
「はい」
「……そう」
短くそう言った三島は、もうこの話はお終いだよ、と言う風に背を向けた。
その背が遠ざかる、以前はその背を見つめただけだった。
追いかけて、その手を掴むことをしなかった。
その手を掴むことを恐れたから。
私なんかが、三島幹部の心に踏み込むことを
してもいいのか、と恐れたから。
でも、今は、踏み込まなかったことへの後悔が
大きい事に気付けたから……
「待って下さい……っ」
ぱし、とその手を掴んだ。
手ではなく、服の裾で止まってしまったが。
振り向いた濃紺の瞳に、もう動揺も、そして垣間見えた焦燥もない。
あったのは夢の中の独りぼっちに慣れてしまった味気ない空虚な色。
「どうしたんだい?」
「じゃあ、私は、三島幹部に好きですって言い続けます。
三島幹部が判らないと言っていても、私は愛しているって言い続けます」
「それが僕の迷惑にならないって考えなかった?」
冷たい言葉が、冷たく感じないのは何故ですか?
突き放そうとしてくれている。
傷つかないようにしてくれている。
その気遣いに、その優しさに
私は、すがり過ぎていた。
「考えて、それは迷惑にならないって思い至ったのです」
「何故?」
「それは、私がそれを続ける事で
三島幹部が……私から発露した感情を摂取出来るから……」
「––––はは」
怖い。
本当は、生易しいその優しさに包まれて
それとなく突き放されてゆくのを感じるのが
本当は怖かった。