第23章 Garden of Daydream…IV
幹部会議が終了した。
「中原幹部。
もう朝も遅いですが、軽めの朝食を食べられますか?」
菜穂子がそう聞いた。
配慮の利いた言葉だった。
朝昼兼用にしてしまっても きっと良かったが、たぶん昼食は
三島幹部と一緒に摂られるのだろうと予想したから、そうしたのだ。
「あー……頼むわ。 出来たら俺の私室に持って来てくれ」
「はい。」
頷いて腰を折り、菜穂子は自分の直属幹部の元へと一直線に行ってしまった。
「三島幹部、この後はどうされますか?それと、朝食も」
三島が人間の食事をしても無意味なことは勿論判っているが……
"人間らしく"を大切にしている彼は、
そういう人間的行動が苦痛だったとしても
何ともないように毎度それをこなすことを大事にしていた。
「上橋はこのまま中也のそばにいて欲しい。
朝食は要らないよ、僕はこの後すぐに済ませないといけない用事があるから、そっちに行ってこよう」
この流れだと、今回の一件が絡んでいる用事なのでしょう。
深く聞いてはいけないのかもしれない。
それがゆくゆくは私たちの力となるための用事なら、聞く必要もないことだから。
でも……
「三島幹部」
「うん?」
幹部の怪我をしていない方の手を取って頭を垂れた。
「……私は、貴方の部下です。
だから絶対、ずっと帰りを待ちますし、お迎えにもあがります」
ふと見れば、三島幹部の澱んだ濃紺の瞳は
私を見ているようで見ていないものになっていたけれど
一枚の絵を見ている、その瞳に私が背景として映っているのなら……
「……私は、三島幹部を愛していますから」
映っているのなら、私はまだ、諦めません。