第23章 Garden of Daydream…IV
「で、その辺りは後で話すとして、相手が女性だった時。
バージンキラーの蹴りを、上橋一人でも防御は出来た。
……ま、膂力については個人差かな。その素体のね。」
膂力、最後の蹴りである。
防御は出来たがあの個体の脚力が元々強かったのだろう……
だから菜穂子は衝撃に耐え切れなかった。
「……て、ン?おい三島、いま素体っつったか?」
「うん、言ったよ。
ここで、バージンキラーが一人ではないとして……」
「おいおい……」
随分 面倒なタイプになって来たと中也が辟易した。
「でも、それの判断材料は物理的に少なくなかッたか?」
「いや、充分足りたよ。
まあ、目視出来る部分では、ってことで充分ってだけだけれども」
俺が必死にこいつを守りながら戦うのが役目なら、走査して見分するのが三島の役目だ。
「先に上橋が言ったこと、バージンキラーが手負いだったってやつなんだけどね。
バージンキラーが上橋を相手にした時の強度が元ステータスだとしたら、あのバージンキラーは結構ぼろぼろだと思わなかったかい?」
菜穂子に限らず女全般という結果が出れば尚良かったのだろう……
しかし、無闇に女を危険に晒すのは三島の紳士道に反する。
「……あァ……確かにな。
つまり、少なくとも先にあいつと戦ったのは男じゃなかったってことか?」
「うん、そういう事。
先にあのバージンキラーと戦ったのは女性、しかも手練れ。
洋服や身体の傷具合からして裂傷だから、獲物は刀剣とかだね。包丁にしては傷が深い」
深さは重さに比例する。
長さは加速に比例する。
俺がもう少し長く戦えていたら、もっと色々判ったのだろうか。
否、たぶんこれ以上は出なかった。
「……そして……ね、今夜もきっと……
"別の"バージンキラーが出るよ」
それは呪いのようだった。