第23章 Garden of Daydream…IV
酷い夢を見た。
(嗚呼……くっそ……)
確かに、自分から三島に夢を任せるとは言ったものの……
栄養を高めるために 見る夢はとびきりの悪夢ではないといけないことくらい判っていたはずなンだがな……
案の定、現実の世界では中也は云々と酷い悪夢に魘され、
それがハッピーエンドに向かうことはなかった。
有り体に言えば、見せられるもの全てが
自分の手が届く距離にまであるくせに消えていくという、無意味な夢。
(うーん……うぅ…っ……)
苦々しい顔をしながら眉間に皺を寄せる俺は寝返りをうって唸った。
「やあ。おはよう、中也」
「三島……手前ェ、何だよこの最悪な悪夢は……」
ふわふわと曖昧な光の粒子が、
奴の、夢の中での身体を構成していて
「だーから、言っただろ?
ただの悪夢では、味気ないんだ。
こうして魘されて、思いもしない方向に勝手に誘導されるだけで……それで解決するのだからね」
嗚呼違う。
こいつは三島だがあいつじゃねェ。
皮肉屋で男には冷たくて、それでいて女にゃまるで花を扱うように接するあのいけ好かない紳士じゃない。
「僕の夢に堕ちたからには、ここでこれに惑わされて全てを擲ったって責められないっていう甘さがある。
平等に君を責めるものはいないだろうし、夢に囚われ続けた君はだんだんと衰弱するだけだし」
そう言って意地悪く笑ったこいつは、どこの誰だ?
冷たい紺色の目が見ているのは、考えているのは何だ?
「ま、僕にとっては良いことだけれど。
感情源が半永久的にこれで保障されるということだ。
ね、中也」
「うるせぇ、俺の一時の夢をくれてやってンだ。
手前ェはさっさと自分に足りない分の感情を補うンだな」