第23章 Garden of Daydream…IV
「だから、僕がいつもと違うって感じるのなら、何て言うか……
ちょっとだけ希薄になっているってだけだよ」
自分の中から すっと溶け消えていくみたいに
感情が少しずつ無くなっていく感覚。
量の少なくなった感情リソースの 枯渇を、何とか後延ばしにするために
"一日使う量"を減らしているということだ……
残ったものを、ぼろぼろになった残滓を平たく薄っぺらく。
そうした結果が、今のこいつだ。
「俺の夢をくれてやるから、三島は少し休め。
ただでさえ外の世界は、手前ェには害悪にしかなんねぇってのに」
「いや、あのね?
全く眠っていない、眠る気配のない君の夢を食べるなんてどれだけ体力を使うと思っているのさ……
夢の中に引きずり込むことだけでも、骨が折れると言うのにだ」
三島の言い分ももっともで、俺は会議室のふかふかの革張り椅子にどかっと座った。
低反発のクッションが体重を支えて、身体を包み込んでくる。
「菜穂子」
「ここに」
まだ菜穂子が解除していなかったのか
とんと静かな着地音を立てて、獣が降って来た。
三角跳躍で床から壁、壁から天井へと身を隠していたその獣が
お役ご免とばかりに文字の帯となって粒子化する。
「俺と三島は一時間くらい寝る、その間に手前ェも休んどけ」
「はい。政府から来た新しい情報を纏めておきます。
では、一時間後に。
お休みなさいませ」