第22章 白と黒の境い目…太宰治誕生日 6月19日記念
「良いのかい?」
「うん、その辺の調整程度なら僕が何とかしてあげられる範囲だしね。」
ふいとまた目線を逸らした三島君は、光の渦の中にいる彼女にも聞こえるようにそう言った。
少しずつ真綿を型取り創り上げた光が失せて、此方へと歩いてくる。
「……久しぶり……真綿。今度は、本当の真綿だ」
「ま、夢の一端……だがな?」
嗚呼、夢は夢でも、生易しいものじゃないんだ。
この彼女にも自覚はちゃんとあって、私がこの一夜の夢から醒めれば自分が消えることも理解している。
「そう言えばさ、新しい名前が……ついたんだってね。
ね、真冬」
「ふふ。良い名だろう。今のあるじ殿がそう付けてくれた。」
嗚呼、そっか。
もう森さんじゃないんだよね。
何だか慣れないな。
「今後はそう呼んだ方が良いかい?」
「好きにすると良い。慣れないうちは真綿でも良い」
そう言って笑った真綿を、私は力一杯 抱きしめた。