第22章 白と黒の境い目…太宰治誕生日 6月19日記念
「……そう。大層な力、干渉力じゃないか。」
立ち止まって遥か彼方の水平線を見つめ続ける
三島君の虚無の瞳が私から逸らされた。
「君が望むだけで意味を得た夢……ね。
空想にも妄想にも近しい、具現化されたこの夢は
君の為だけにあるってことだ。」
皮肉を呟くようにそう言った三島君の隣にまた光の粒子が渦巻いた。
「……嗚呼、今度はちゃんと僕にも見えるよ、太宰。
僕の隣に、彼女がいること。」
そのかけらが真綿を創り出した……
私たち二人と、一緒に歩く夢を見ている。
酷い夢だ。
それは、私も三島君も
永遠に叶わない、それこそ夢だと言うのに……
「ははっ……
光の差す白の世界の道に……ああやって二人で歩けるわけ、ないのにね」
白と黒の境界線は、境い目は、永遠に埋まることはない。
黒く染められたものは、何をどうしても白に戻ることはできない。
白いものを黒にしてしまうことは容易いのに
後戻りは出来ない。
それが、この世の相場なのだから……
「太宰」
「うん?」
唐突に呼ばれ、彼を見れば
三島君は、少し離れた岩の上に座って、水平線を見ていた。
「彼女……君が望んだこの世界の真綿と
少しくらい二人で話す時間をあげようかなって。
そのくらいの時間稼ぎなら、僕にも出来るだろうし。
ま、とは言いつつ……夢が潰える進行を止めることは出来ないからね。
精々頑張ってその速度を遅くさせるってだけだよ。」
言い切った君は、何を見ている?