第22章 白と黒の境い目…太宰治誕生日 6月19日記念
「早くこの夢から覚めておくれよ。僕が帰れない。
何だってこんな寒い海に、
誰もいない砂浜にいることになっているのさ……」
三島がきょろきょろと周りを見渡した。
判らない情報をこの夢の環境から得ようとしている。
しばらく目で走査してから、ふぅん、と呟いた。
彼の頭には途方も無い膨大な情報量が流れ込んで来ているのだろう。
「……何となく、八割くらいは判ったよ。
あとは僕なら何とか出来るだろう。
花みたいに散らせてしまっても良いのだけれど、もう少し付き合ってあげるよ。
この、君の夢にね。」
この景色が、この風が夢だと言うのなら、三島に牙を剥ける訳がない。
この夢は太宰が深層心理で望んだものだとしても、
それがどんな夢であれ、三島の支配下にあった。
三島がすっと太宰に背を向けて、一人で砂浜を歩いていく。