第22章 白と黒の境い目…太宰治誕生日 6月19日記念
「はーぁ、度し難いねぇ…本当にさぁ……」
好きな人が化けて出てくるだなんて
本当、酷い夢だ。
「そこに関して、ちょっといいかな、太宰。
今回の場合、僕は君に引っ張られて来た、という事になるのだけれど?
その点について君に物申す立場にあるのはこの僕だ。」
「……え?」
やっぱり君、自覚無しでやったのかなと三島が呆れるように息を吐いた。
「僕だって、外道じゃないんだ。
むしろ今日は君の誕生日なんだろう?
だったら今日は出張らず、僕は君の夢に何も仕掛けないさ。」
そう言って濃紺の瞳を細めた三島が、やっと穏やかに笑った。
しかし、またすぐに その笑みが消える。
何を考えているのかが判らない曖昧な瞳を太宰に向けて来た。
無関心なものに、無理やり興味を向けようと頑張っているような瞳。
「でも、こうして僕は君の夢に引っ張られてここにいる。
しかも、僕が真綿だって?それこそ酷い妄想だよ。」
彼女はもう、僕らの隣にはいないと言うのに。