第21章 Garden of Daydream…III
「おっと」
乱歩がぺらぺらと資料を読んでいたその時、またも電話が鳴り響いた。
今度こそはと受話器を取る。
「武装探偵社です」
《ああ、良かったわ!まだ居たのね》
違った。
女性違いだった。
「……嗚呼、隣町のイナバ屋の」
《今なんだかがっかりしなかったかしら?》
「まさか」
珍しく面白そうに笑った福沢が、
夜分に電話を掛けて来るだなんて珍しいなと言った途端。
《そうそう!ねえ、真綿ちゃん……あいえ、事情のほどは聞いています。その名は駄目なのでしたね。》
「? なぜ貴殿がそれをご存知で?」
件の資料を読み耽り、何だか複雑そうな顔をしながら話し合っている3人を尻目に尋ねると
《嗚呼、そう、それ!ご結婚おめでとう!》
「……………………は ? 」
唐突に理解し難いことを嬉しそうに、
それはもう嬉々として言われて福沢は、割と本気で低い声が出たと自覚していた。
《いつ、どんな時代にも生きているような、不思議な子。
ええ、福沢さんとも何だか合っているみたい。》
「待て。 どういう事だ。彼女は無駄なことはしない。
これは何かの符丁なのか?」
電話の向こう、可笑しそうに笑うイナバ屋の女店主がいた。