第20章 Garden of Daydream…II
塀の上へと獣の巨体が着地し、研いだ爪を光らせる。
「動くな」
バージンキラーがぐるんっと首を回し、制止をかけた中也を見た。
注目したのは確かだが、果たしてどこを見ているのかが判らない。
「そこはすでにあの獣の間合いだぞ。
喰いちぎられたくなきゃそのまま膝を着け」
「––––男。男。女……!」
聞いているのか聞いていないのか、
否、言葉として理解していないのか。
「……殺すぞ。菜穂子」
「はい。」
ブロック塀から降りた猛獣が、目の前の食物へと牙を剥く。
「––––ッ! ––––ッ!」
「黙れよ、穢れ」
バージンキラーが手足をばたつかせたが、あの巨獣のあごの膂力と咬合力に敵うわけがない。
獣が噛みついた奴の頸椎から噴水のように血が噴き出して、
真夜中の道路を 真っ赤に染めあげてゆく。
「ぁ、ああぁあ……っ!」
そこで初めて、この人形のようだったバージンキラーの人間らしい反応を聞いた気がした。
まるで、今まで切られっぱなしだったスイッチが、突然入れられたように。
「……違う、か。」
「何がだ?」
何やらまたも考えを巡らせるように目を伏せた三島に
中也が問いかけた。