第20章 Garden of Daydream…II
ダンプカー以上の質量と、同類を軽く越した速度によって当て身を喰らわされたのだ……
本来、人間が生きていられるようなものではない。
轢死して当然の事のはずなのに。
「……殺す。殺す。男は殺す……!」
「おいおい……こりゃ、さながら手前ェが言ったように……鬼、だな?」
全身を打ち身、打撲したその身体はもうぼろぼろなのに、
折れた鉈には目もくれずゆらりと立ち上がった。
「……!」
三人が反応するよりも速く、奴が動く。
「上橋!受け身をとり給え!」
「っ!」
見切った三島がぎりぎりでそう言ったものの……
ポートマフィアの体捨流は防御が少なく、速度までは相殺出来ない。
「っぅく……ッ!」
バージンキラーの蹴りを腕で防いだものの、菜穂子の身体では耐え切れなかった。
「ッきゃ……!」
【……!】
菜穂子の小柄な体が軽々吹き飛び、
そばにいた彼女の使役する獣が彼女が壁に叩きつけられるまえに
壁との間に滑り込み、自身の巨躯を衝撃緩和材にさせた。
「うぅっ……!」
【……!】
獣が歯を噛み締めて、菜穂子の衝撃を殺した。
「済みません、ありがとう!」
獣が鼻を鳴らし、乗れと促す。
背に飛び乗って毛を掴んだ菜穂子が、
バージンキラーの間合いから退いた。