第20章 Garden of Daydream…II
否、違う!
【gRrrrr––––……!】
獣の猛る咆哮が響き渡り、地震のように周囲の地面が揺れた。
「––––申し訳ありません……っ!
急いだつもりでしたが、もうお二人の戦闘が始まっていまして……!」
二人の前に荒々しく着地した巨獣。
その背にまたがり、獣の首の毛を掴みながら駆けて来たのは、菜穂子だった。
【獣の奏者】。
上橋菜穂子が保持する異能力である。
「良かっ…、間に、合った……っ……」
超高速で疾駆、飛来してきたこの獣が、
バージンキラーを弄ぶように嬲り、体当たりしたのだ。
レンガの道路壁にバージンキラーをしたたかに叩きつけ、
肺から空気を強引に吐き出させる。
全身の骨が軋み、擦れ、粉砕された音が大きく鳴り響く。
バージンキラーの身体もろとも
このヤマイヌのような獣がコンクリートの壁までもをぶち抜いて、砂煙を巻き上げた。