第3章 汚く濁っても
中也がコーヒーを啜り、
真綿が資料を整え終わる、
そのタイミングを見計らったかのように。
ジリリリリリ––––!
けたたましい程の警鐘が、アジト一帯に響き渡った。
「……敵襲か」
「ふん、煩わしい。」
未だ大音量で鳴り響くベルを
まるで聞こえてないかのように話し続ける2人。
肉弾戦を得意とする中也はともかくとして
暗殺者である真綿は、前線には出てきてはいけない職種だ。
こういうことはよくある。
その度に出てゆくのは下級構成員達。
取り換えの効く者たちは潰れ、また補充されてゆく。
「…ま、妾としてはそういう方針を貫く者だからこそ
森殿に従うと誓ったのだがな」
真綿は、自らの保有者である森に忠義を誓った身。
それが一時の物であろうとも
暗殺者たる真綿の矜持なのだ。
「真綿君、中也君、いるかな」
そこへ、ちょうど 話に出てきた者が訪れた。