第20章 Garden of Daydream…II
その日の夜中。
やはり三島が菜穂子に頼んだ"頼みごと"は難題だったらしい。
だからこそ頼みごとだったのだが……
菜穂子は時間を食われ、未だ合流は出来ていない。
月は煌々としていて、時折冷風が吹き抜ける夜半。
『出る』のなら絶好の機会だろう。
「–––– 説却、夜だ。 鬼が出る時間だね。」
「逢魔時の方が説得力あるぞ、それ。」
二人はそんなことを言いながら深夜の街を歩いていた。
いつも通りに、いつもみたいに。
長い影が月の光によって前方へと伸びている。
「……ねえ、中也」
「……嗚呼、判ってらァ……」
ひと気のない道路を歩く二人をつける影。
立ち止まった二人に走り寄る。
ゆらりと陽炎のように揺らめいたそれが、鋭利な鉈を振るってきた。
中也が三島の腕を急いで掴み、刃の間合いから出る。
「うわ……っ!っチ、三島、手前ェは退がってろ!」
「中也、途中で合図をしたら屈め」
「あいよ!」
三島を背に隠し、中也が前進する。
バージンキラーの顔面に殴打が充分届く距離まで跳躍して、
すぐに後ろへと退いたその人型が鉈を振り上げてきた。
「甘ェっつの!」
腰に差したホルスターから、拳銃を抜いた。
横へと跳んで鉈を避け、奴の頭部を狙って撃つ。
「っ!」
ぢぃん!と甲高い音が夜道に響き渡った。
鉈が紙一重で銃弾を弾き返して、カランと銃砲が地面を打つ。
「反射だけは良いってかァ?」
「…男……殺す……!」
まるで親の仇みたいに憎々しく吐露された言葉が、二人の耳を打った。
憎悪が滲む声は、地獄から響いてくるようで––––
「おいおい……っ…三島!これ、出来そうか!?」
「大丈夫だ!屈め!」