第20章 Garden of Daydream…II
時刻は午前三時過ぎ、まだ暗い明け方を高級車が何台も疾駆している。
朝の四時までには向こうのポートマフィア傘下企業に到着したい。
余分に時間は見積もってはいるものの、
急襲を受けないとも考えられなったため裏道ではなく撹乱しやすい表道を走っていた。
数十分前、菜穂子に一つ頼みごとをした三島は、彼女を車から降ろし、別行動させていた。
「…………。」
三島が資料を捲る。
その時、車内の内線通信に中也から受信が来た。
「僕だ」
《そろそろ着くぞ。話がある。後でな》
「判ったよ」
端的に業務連絡を済ませ、まもなく幹部車両が地下駐車場へと収まる。
「ようこそお越しくださいました。中原様、三島様。こちらへ。」
二人がそれぞれの車から出てくれば、傘下の企業に勤めている部下たちが一斉に頭を下げた。
「一人、僕の部下を使いに出した。帰るのは早くて今日の夜だ。
あと、首領から聞いていると思うけれど、しばらくここにお世話になるよ。」
穏やかに笑う彼に、この物々しい人の列はそぐわない。
「恐縮です。お荷物をお持ちします。」
マフィア側の黒服が持っていた荷物を受け取り、ビルへと入る。
ポートマフィア傘下のこのフロント企業は、表向きは電機系製品会社として名を連ねている。
中也が黒服たちに指示を出してから、三島の元へと戻ってきた。
「部屋行こうぜ」
「そうだね」
ルームキーを手に取り、幹部二人がビルの最上階へと向かった。
まもなく明ける暁の光が、煌々とヨコハマを照らし出した。