第19章 Garden of Daydream…I
影が駆けた。
未確認X(便宜上)が受け身をとる、
攻めることより待つことを得意とする暗殺一般には不得手。
「–––– …疎影 横斜し……」
ここに、かつての彼らがいたのなら
初手でこれを使うことを咎めていただろう。
しかし、相手の詳細が判らないのだから
早めに殺っておく方が良いだろう。
––––急ぐことではないし、性急にしないといけないのなら撒くが……
「っ」
異能解放、詠唱を諳んじながら一歩二歩と距離を詰める。
「–––– 月 黄昏……」
異能発動の合図。
シアン色をした文字の羅列帯が身体にまとわりついた。
蛇が首を持ち上げるかのように、碧色の文字帯が身体を包む。
足元から霧が発生し、視界を徐々に曇らせてゆく。
「––––ふ!」
「ふ、ぬるいぬるい」
甲高い刃音を立てて、刃が滑り込むように旋回した。