第18章 色彩
「うん……どうしようかな。
筋骨隆々な益荒男だったら、まだ暴力に訴えることも吝かじゃあないんだけど……」
娘の目を見ながら、三島が穏やかに笑った。
その笑みが自分にだけ向けられているものだと判った娘は
恋をする乙女のように身を縮こまらせる。
自分は手の届かない存在なのだと思い知らせるように、三島は素知らぬふりを続けた。
「年若い手弱女と来ると、どうにも手段が限られちゃうな……」
ぐらりと娘の頭が揺れる。
どうしようもない眠気が、倦怠感が、体を襲った。
眠気。どうして。
散々された拷問疲れだとしても、こんな、いきなり––––
「……【仮面の告白】」
ほとんど声にもなっていない三島の詠唱が耳を打った。
「……じゃあ、まあ、仕方ないよね。
怖いことをするのなら夢の中が一番だよ。
君の深層心理に深く刻み付けられる手段。
きっと君のトラウマになってくれるとも。」
それは別に、暴力じゃなくてもいい。
言葉によるものでもいい、異能でもいい。
「女の子を傷付けてしまうのは嫌なんだけれど……口を割らないのなら仕方ない。
僕に惚れた、君の失態だから。
僕に痛いことされたくなかったら自白して、だなんて優しいこと言わないよ?」
三島の紺碧の瞳が、目に涙を浮かべて必死に猿ぐつわを噛んでいる娘へと向けられた。
外道だと訴えられているようだった。
「僕が欲しかったら全部 口に出しちゃおうか」
ぷつりと娘の意識が、夢の中へと落ちていった。