第18章 色彩
鎖から繋がれた両手はがん無視して、麻袋だけ剥いだ。
猿ぐつわのされた、まだ年の若そうな女の子。
けれど、そこまで言うほど子供でもない女の子。
「やあ、今晩は。
そしておはよう。
君が眠っていたら、君の夢の中で出会えていたはずの人間だよ。」
そう穏やかな声で告げた。
がしゃん、と鎖が一度だけ大きく揺れる。
娘が朦朧としていた瞳を、目線を、確かめるように三島へと向けた。
澱んだ黒い瞳。
長時間の拷問で吐いた血が、切れた唇にこびりついていた。
「っ ––––!」
無気力に向けた瞳を、娘が大きく見開いた。
そこにいた三島の存在に一目で堕ちた、ごく普通の、ありふれた年相応の女の子のように。
「……ぉ、……っよ、ぅ…ぃ……」
「うん。丁寧な挨拶をありがとう。」
『お早うございます』。
猿ぐつわをさせられた娘の唇を、当意即妙に読み取った三島がにこりと笑った。
いつもの笑みで。