第18章 色彩
「そう、意思。」
愛さなきゃいけない。
なんて曲がって歪んだものなのだろう。
義務から来る恋愛感情だなんて、私は認めない。
義務になった時点でもう駄目だと思う。
愛の表現は惜しみなく与えるだろう。
でも、愛の本体は惜しみなく奪うものだ。
恋愛とはなにか。私は言う。
それは非常に恥ずかしいものである。
「愛することにかけては、女性こそ専門家で、男は永遠に素人である。なんかそんなの読んだなぁ」
戯けるように笑った三島君。
珍しい彼の笑みの仕方だった。
「そうだ。三島君、この際いいこと考えた。」
「え〜……?……不穏だなぁ」
眉を寄せて困ったように笑う三島君が、私を見た。
「君を愛してくれる女性がたくさんいるのなら、
むしろ君と友達とか、知り合い止まりになっている女性を探せばいいと思う」
「僕はその彼女達をともすれば失うことになるって考えないのかい?太宰は」
さすがに乗り気じゃないよね。
「失ったって、君はその記憶を消してしまえるだろう」
「それは……そうだけれども……」
三島君にしては珍しく、答えを即答しなかった。
机の上の携帯が蠢動して、鈍い音を立てる。
「はい。三島です」
《私だよ。ちょっと今から、首領執務室に来れるかなぁ》
「判ったよ」
ポートマフィア首領、森鴎外。
彼の命令に逆らえる配下がどこにいるものか。
「森さん?」
「うん。ちょっと行って来るね」
「そ。じゃあ、この話はまた別の機会に。ね?」
怪しく微笑んだ太宰に辟易したのか呆れたのか、
三島が困った笑みを崩さずに手を振った。