第18章 色彩
「ねェ、三島君……」
太宰が彼に呟いた。
当の三島はどこを見ているのか見ていないのか
よく判らない瞳をただ虚空に向けている。
「私は、君が判らないよ」
「だろうね」
何を考えているのか、いないのか。
その濃紺の瞳で、何を見ている。
「三島君は、彼女達に何を求めているんだい?」
「さあね……考えてみて、太宰」
「判らないから聞いているんだ」
首を振った太宰がそう言う。
一足飛びに答えに辿り着けるだなんて甘い考えはしていない。
ただ、それでも相手が三島君なんだったら、答えを早々にくれると思っていた。
「僕の異能力がなかったら。そう考えたことは少なくない。
そうしたら、ちゃんとたった一人の女性を見れていたのかもしれない。」
「現に君がそう出来ていないじゃないか」
これは異能のせいなんかじゃない。
三島君だって判っているはずだ。
もう、すでに。
「そうだね。僕は、まず……恋愛感情が判らない」
恋が入ってくれば、知恵が出て行く。
愛せなかったら通過すればいい。
「恋愛は機会ではなく……私は意思だと思うんだ」
「意思?」
目線を上げてこちらを見た三島君が、首をかしげた。