第17章 もういいかい?
「無論、私にもその考えがなかった訳ではない……」
国木田の顔に、その安直で妥当な打開策が書いてあったのだろう。
悟った社長が低い声で答えた。
「探偵社に来るのは、あるじである私がここにいるから、と。」
もしも私がどこへ行こうとしても
あの彼女ならどこへでもついていくだろう。
社長が望めば、きっとその全てが一身に手に入ったのだろう。
死ねと言われれば介錯し、殺せと言われればすぐに実行する。
彼のためだけに声を捧げ、地獄までついて行く。
それが、真綿の矜持だから
「だが、それを振りかざして強要させるのは筋違いだろう」
「……それは…」
己の考えは、ただ圧力で真綿を縛り付けるものだ。
確かにそれは筋違いもそうだろう。
「……はい。その通りです」
「それで、だな。新入社員は国木田、お前に任せたい。」
そんな状態で真綿に任せるのは避けたい、それは国木田でなくても思うところだろう……
「其奴の、名は」
「嗚呼……入れ」
社長室が開いて、いつもの事務室へと
踏み入れてきた男。