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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第16章 うたかたの夢 …4月1日


僕の言葉に、彼女がふっと笑った。


「嗚呼、そうさな。妾とお揃いだったのに」

「君をからかうのは好きじゃないよ」


身体が重くて起き上がれない。



夢の中は、たしかに 訪れる女の子たちにしてみれば

それはもう楽園なのだけれど……

持続するために徴収される僕のものは大きい。



「冗談さね……って由紀、身体が…」

「嗚呼……さすがにちょっと休まないと……だよね?」



寝転ぶ僕の頬を、真綿の手のひらがなでた。

そのまま包帯を巻いている怪我をなぞり、体温が離れる。



「ねえ……真綿。僕が真っ当に人を愛せていたなら……どうなっていたのだろう」

「ふむん……いきなりだね」


答えを性急に求める僕を許してほしい。


だって、覚めてしまう前に……君に話しておかなければならない。



「…そうさな。 妾と由紀は恋人と言うには
もう、とうに越した仲だったし……

あの笑顔の可愛らしい菜穂子でも傷つけてしまったか?」



傷つけた。

直球な言葉に、それでも僕は頷けないでいる。

罪悪感の湧かない僕には、理解しがたい行動だった。



僕には良心が残ってはいるものの、それは人よりはとても希薄。

【仮面の告白】を保持した瞬間から、僕には感情の機微というものが判らなかった。


救いようのない、この世に生まれついた瞬間から。



「罪悪感が判らないだなんて、僕は非人道的なのだろうね」

僕の独白は、こういう気分は何度目のことだろう。


さらりとミルクティー色の髪を梳いた真綿が、三島の紺碧の瞳を見つめた。


「そうか?」

「え?」


彼女の濁った黒瞳は、三島だけに許した『何か』がある。

それがこの彼らを繋ぐ、『恋人以上』の何か。



「妾とて、契約者以外との約束などいちいち覚えている暇はないと言い切れる。

あるじ殿以外の人間などどうでもいい、とね。
ただ……由紀、貴様が、貴様だけが例外だっただけさ。」



それは、この二人が出会った時に

すでに決められていた因果のようなもの。


真綿の持つ起因性質と、三島の持つ幻影のまじわり。
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