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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第16章 うたかたの夢 …4月1日


––––"おはよう"。



誰なのか判らない


でも優しくて甘やかな青年のそんな声が聞こえた気がして、微睡む瞼をそっと開けた。



「んんっ……」


寝起きの目に手を遣ると

目の横、頬にかけて少しだけ乾燥した涙の線があるのが判った。



「……私、泣いたの?」


なんで?

どうして?


怖い夢とか……は、なぜか最近めっきり見なくなった。



怖い夢や悪い夢は、この世の最果てにいる夢の中の住人が

正夢にならないように夢喰いしてくれていると言いますが……


「……って、あら?」



手先に感じた柔らかな感触にふと目を遣れば

眠っていた私を包むようにかぶせられていた、私よりも大きな、男性ものの黒外套があった。



袖にあしらわれた和柄の透かしと精緻なレースが、彼の性格をあらわしているようだった。



「それに……これは、花冠?」


真っ赤な薔薇が五本編み込まれ
所々に散らされたコスモスが彩る季節違いの花冠。



「……? 花畑にでも…えっ?

私、一人で夜中に出歩いた…訳ないですし。ええ。」



納得いかないし腑にも落ちない。

でも、見た所自分の身体に一切の怪我もない。




"僕のことは、多分…時期に思い出す時が来ると思う。

まだ、運命が交わらないだけだよ。"



ふと、頭の中にそんな声が響いた。



あなたと会える運命も、遠くないものなのでしょう?

急ぐ必要はないのよね?



"おはよう、ナオミちゃん。

またいつか、白昼夢の最果てで逢おう。"



ええ。

またいつか。



眠れなくてひとりぼっちになった頃

白昼夢で、また会いましょう?
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