第16章 うたかたの夢 …4月1日
「……ほら、完成だ。」
その声とともに、ふわりと頭を覆った柔らかな感触。
視界にちらつく、彼の纏っていたはずの黒外套が私を包んでいた。
「……うん。そうしていると花嫁みたいだね、ナオミちゃん」
かぶせられた黒外套のふちに彩る、精緻なレースが
夢の中を満たす風に煽られる。
花畑の中、風になびいた黒いベールと白の意匠……
「綺麗……」
「お気に召したようで良かったよ。」
頭に何か柔らかなものがあると思ったら
先ほどまで彼の編んでいた花冠が、私を包む黒いベールを極彩色に飾り立てていた。
真っ赤な薔薇の花と、複雑に編まれたコスモスの花。
季節違いの花が融合した、この楽園でしか作れない世界でたった一つの作品……
「でも……こんなに綺麗ですのに……
この夢から出たら、なくなってしまうのが難点ですわね」
私の言葉に、名も知らないその彼が首を傾げた。
「……持ち帰りたいかい?」