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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第16章 うたかたの夢 …4月1日


「……僕にかい?」


そう穏やかに言う彼の笑みが、私に向いた。


この濃紺の瞳も、ミルクティー色の髪も、この声も

絶対見覚えあるものですのに……



「ええ……きっと、いい出会いになる所ですわ。」


貴方のお名前を教えてください。

ずっと前も、なんだか……同じようなことを聞いた気がするのは気のせいよね?



あの日も、こうしてうたた寝をしながら迷い込んでいた時に

彼の夢へと案内されて……



それが本当に夢のつづきだったのか

それとも……魅てしまったなら、忘れることが約束された
たった一夜の夢まぼろしなのか…



"おはよう、ナオミちゃん"。

その声に縋って、起きたら何も覚えていなかった。



「うーん……」

「どうかしたかい?」


思い出せないことが頭の、何だか出そうなところまでせり上がっているのに……



「ぁ……」


頭を押さえて唸っていた私の手を、彼の手が包んだ。

その指が手の甲をなでる。


ざぁっと花吹雪の風が、私の髪を揺らして花びらを舞い上げた。



「僕のことは、多分…時期に思い出す時が来ると思う。

ただ、今がその時ではないだけだ。
まだ、運命が交わらないだけだよ。」


「えぇ……」

彼の言葉に自然と頷いた。



唇から漏れた言葉も、無意識のうちのものだった。


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