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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第15章 花は盛りに


「……ごめん…」


僕は誰に謝ったのだろう。


元々 感情の起伏に乏しい僕は、罪悪を感じても

人間のそれとは深さが違う。



悲しみも喪失感も喜びでさえも

君たちのそれとは、深さが違うんだよ……



好きなんて判らなかった。


愛や恋

他人の恋路や恋愛観念


僕にとって眩しくて、とてもじゃないけれど手に出来ないであろうもの。



中也に言われたことがあった。


"そんな風に無差別に女を抱いていたら、手前ェが死ぬぞ"……


今思えば、心配してくれたのかな。

中也って何気に優しくて、面倒見いいから。



「……三島さん…三島さん……」



判らないんだ。


女の子は好きだよ。

でもその好きは、たった一人を愛する好きとは乖離しているんだ。



「……ごめん…」


縋るなら僕に縋ればいい。


僕は君たちから愛を貰える。

君たちは僕の夢で、孤独を埋められる。




「……三島さん…ねえ、あの子…誰…? 誰だったのっ…」


情緒不安定だった上に、上橋と一緒にいた所を目撃したこの彼女は

僕を独占して、奪って、泣きつくことしか出来ないから…




「……誰でもないよ……全部、君の夢だよ。」


僕は目を閉じて、彼女の頭を優しく抱き寄せた。


もう泣かないで。




「夢…? そう…よね…? 夢、ですよね?
だって、嬉しい……三島さんが、こんな近くに……」

すっとまるで息を引き取るみたいにあっさりと寝付く彼女。

さっきまで泣き叫んでいたのが嘘みたいな穏やかな、女の子の寝顔。


僕はほんの少しだけ笑った。

あとは僕が、彼女の白昼夢の中に入るだけ。



「……ごめんよ…」



君たちを傷つけても


僕には少しも、罪悪がわかないんだ。
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