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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第15章 花は盛りに





目から溢れる涙を、手の甲でぬぐいながら
手首を掴まれて、私は半ば引きずられるように歩く。



「私では……」


前を歩く、中也様の小柄な背に問う。

訴えるように、もしかしたら泣きそうだったかもしれない。


「あ?」


振り向いてくれた中也様の纏う外套が、その振動で揺らいだ。

中也様の青色の目が、私を見つめた。



「出過ぎた真似かもしれませんが…っ

私が、三島幹部に
愛を伝えるのはでは……駄目なのですか?」


震えそうな手を握りしめた。




怖かった。

盗られたくないと焦燥に駆られた。
私では駄目ですかと叫びたかった。



その濃紺の瞳と合えば、
そらしてしまいそうな目も顔も、合わせられない。

足も震えてしまいそうで。




「私が、三島幹部の恋人では…駄目なのですか?」


他の女性だって沢山いて、むしろ私なんかよりも……
でも、そう判っていても。



「私では、足りないですかっ…」



他の人に盗られたくない人……

中也様が私の独白を、泣き言を聴きながら
歩き続ける。



「三島幹部の隣が、きっと務まるようにします
これからもずっと……お側に居ります…」



元よりこの命は、三島幹部に救われ、
三島幹部に買われた命だった……



「…ーッだから……っ!

だから……」



ずっと好きだったことを隠していた。

ずっと慕っていたことを隠していた。



部下として、貴方を見ていたことにして、誤魔化していた。

それでも三島幹部は……



「……菜穂子…三島はな……」


「いいですっ…… まだ、駄目です…」



三島幹部は、私の気持ちに気付いていて、向き合わなかった。


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