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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第15章 花は盛りに


そこは夢の中だった。


ふわふわとした無意識の最下層。

全てを許され、ここに住まう花園の彼に会える場所。



どんな所よりも平和で、安寧で、穏やかで。

花々が咲き誇る楽園。




ポートマフィア五大幹部が一人……三島由紀夫が引きこもっている、花畑と化した病室だった。


年中 真昼で晴天。

見上げた天には設えられた偽物の蒼穹がある。



____夜もない。

____季節もない。



何より____


ここには、時の流れがなく……白昼夢が顕現した、

世界のどこか最果てにある不夜不滅の監獄だった。




「だからってっ……、一言…いえ、一筆でも記してからにして下さい…」

菜穂子が乞うように言った。


いつも、人形のように無表情だと周りから言われる菜穂子は、三島の前では憚ることなく発露させていた。



「たまには、外界の空気も吸わないとね」


そう緩く笑った三島が、菜穂子の頭をなでた。

菜穂子が恥じるように頬を染め、けれども嬉しそうに笑った。



そんな菜穂子の様子に、地面で行儀よく侍っていた獣が
わふ、と息を吐く。


これが、上橋菜穂子の保持する異能力。




自身が奏者__主人__になって、王と例えられる獣を召させ、従わせる。


異能力名……【獣の奏者】。




「星見……していたのですか…」

「そうだとも。 …何していたと思っていたのかな?」


三島の濃紺の瞳が少しだけからかうように細められて
菜穂子がその視線に照れたのか、言葉に詰まった。



「も、申し訳有りません……。
そ、の。もしかして女性と一緒に居たのでは……と…」



自分の杞憂だったのか。

でも、心配にもなるだろう。



(いいえ…心配…なんて綺麗なものじゃない…)


これは、明らかな嫉妬。

彼にすがり、彼に愛され、彼に抱かれる女性たちがどうしようもなく羨ましかった。



私を愛してと欲して、そう望むだけで

彼は夢の中に招待してくれるのだから……
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