• テキストサイズ

威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第15章 花は盛りに





彼はゆっくりとした足取りで歩いていた。



ひらりと彼の羽織る黒外套の精緻なレースが風に揺らいだ。

惚けるようにその紺碧の瞳は、星空を眺めている。



こうして星見をしながら歩くのは、

この彼が知らず知らずのうちに(女の子たちに感けている間に)忘れていってしまった一つの趣味でもあった。



「おや……」

その足は止まる事なく、けれどもミルクティー色のふわふわした髪がそよぐ。



『WRRR r r r r r』––––!


月下に獣が吼えた。


まるで、大怪我をしているこの彼の血の匂いを嗅ぎつけるが如く…
その走査する足音はこの男を探していた。

一人の人間の足音もついでに聞こえてきた。




「はぁ…っ…はぁっ…」


彼を追ってきたその彼女が、膝に手をついて乱した息を整える。

その彼女を待つように、地面に侍った獣が『伏せ』をしている。





「な…に、やっているのですか…っ!
探しましたっ…三島幹部!」



自身の直属部下である彼女、上橋菜穂子の言葉と
今にも泣きそうに歪んだ顔を見て……

松葉杖をついた彼、三島由紀夫が穏やかに笑った。




もしかして、また自分の知らないところで 女性と一緒に居たのではないかと思っていた……


携帯を鳴らせば良かったと 今更ながら思った。

三島幹部が、女性からの電話に出ない訳がない……


だから、他の女の子の電話一本で行かれてしまうのが嫌で嫌で、こんなにも必死に探し回った。



「…嗚呼……済まない。

ちょっと、楽園の外を見たくてね」




/ 686ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp