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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第14章 明くる日の戦士たち


「どうしたのだ?惚けて……

…嗚呼、この風景に見惚れたか?


うむ、そういう感傷は人間 特有だ。大切にするが良い。」




言葉の続きを待っていてくれたのか、言葉を発せない私に

その人が桜の木の上から、話しかけてきた……



「感情など、その場凌ぎの、一時限りの、使い捨てなのさね。

それに固執しなくても、また外から補充すれば良い…」



その白い着物の袖口から ちらりと見えた、包帯の巻かれた左手には桜の花びら……


風流なのは、あの彼女もですね。



真っ白い着物の裾がたなびいて

龍のようにも見える…



「…貴方に、見惚れてしまっていました」


その女性が 私の言葉に、一瞬だけ目を丸くさせ

その綺麗な顔の口元を、楽しげに三日月に歪めた



そんな不敵な笑みも綺麗なのだから

笑顔はもっと綺麗なのだろう…




「…ふむん?」


ッとん、とその方が地面に降りてきた。



高さにして3、4メートルはありそうな高さだったのですが

着地の音は無いにも等しい…




「貴様、名はなんと言う」

「ぇ、と。 樋口一葉です」



目の前にまで 歩いてきた彼女が

私を見ている、それなのに 何故かこのまま射殺されてしまいそうな危うさもあった。




「…一葉。

樋口一葉か。」



噛みしめるかのように

私の名をゆっくりと、反芻させる。



「良い。

良い名だね。」




白い着物の袂からわずかに覗いた、

包帯の巻かれたほそい腕。



「一葉。

妾は、真綿。

うむ…妾の名は、少々幅広く噂が流れているのだが…ま、覚えておくことに損はない。


では、の。」



そう言って、彼女は袴を着ているというのに

木の上にまで飛び上がって、あっという間に去ってしまう。



「……真綿…さん」


一夜のまぼろしのような出会いだった。



闇夜に映った、月下美人の花のように白い着物姿。

脳裏になぜか妙に焼き付いた、虚無を感じさせる濁った黒瞳。



矢ッ張り 私____。
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