第14章 明くる日の戦士たち
あの日、あの氷雨の降っていた 冬の季節。
真綿を拾ったあの時から、季節は一つ巡っていた。
久しぶりの外での茶会だった。
福沢邸の縁側で、真綿と乱歩、福沢は酒を飲み交わす。
そして今夜は、依頼成功も兼ねてか国木田もいた。
「発泡酒は好きじゃない、泡が弾けるでね」
この彼女は、昔から米の酒が好きらしい。好んで飲むのは日本酒だ。
無論、福沢は真綿の好みに合わせている。
もっとも、自分もあまり発泡酒は好かない。
乱歩は元々お酒に疎い。
甘党は酒に弱いのが通説なのだが…
真綿は甘いものも酒のように辛いものもいける方だ。
国木田は……弱い方だ。
季節は巡る。
あの、この世の最果てに在る花畑の楽園は、こうして季節の流転を感じられる所ではない。
(と言うか……あそこは夢の中、白昼夢だからなぁ…)
独り言ちるように微笑すれば、乱歩も「どしたの?」と笑ってくる。
「桜、綺麗だね」
「そうさなぁ」
夜桜見物とはまた風流だなと我ながら思う…
さらさらと視界いっぱいに花びらが舞い、星の散る濃紺の空に淡い桃色がひらめいた。
この夜空の色を抜き取ったかのような、深い紺碧の目を持つ
白昼夢の中で微睡む彼は……今、何をしているのだろうか。
ポートマフィアの幹部として会議にちゃんと出席しているか?
あの大怪我は、どのくらい治った?
また女子を夢の中に引っ張りこんでは『夢喰い』をして……普通の食事をしていないのか?
「真綿? どうしたのだ」
「んむ…すまない。 物思いに耽っていた。」
お猪口をそばに置きながら、将棋を指し始めた福沢と国木田。
乱歩は、真綿の濃紺の羽織に包まれ、夢の中だった。
その無垢な乱歩の頬をなでてから、真綿が下駄を履いて敷地から出る。
庭の外、川沿いの夜桜並木を眺めていた。