第14章 明くる日の戦士たち
異能力開帳に約三秒、足すことの定句詠唱に約五秒。
速さは異能力で底上げされるとして、
対象まで距離を殺すことの––––
ほんの一秒。
十秒にも満たない、静謐なる舞踏。
「妾が異能力を前にして……逃げ切れるものが有ろうかよ」
鞘に収まったままの小太刀を、標的捕捉した相手の
鳩尾、腹、下腹、振り向きざまに首、眉間……と
活殺点に柄尻を打ち込んだ。
頚椎を打たれて脳を揺すられた囮の一人が膝をついて痙攣、倒れる。
「独歩、もう一人を」
「嗚呼!」
真綿がそう声を上げたとき、すでに国木田が相手を捕捉していた。
手に掛ける速さは真綿が勝ったが、捕捉速度は国木田が速い。
主犯のもう一人へと鉄線が奔り、両足を搦め捕って引き倒す。
「……よし」
「うむ、我々のお手柄だなっ」
そう言って笑った真綿の顔に満足感を覚えた国木田が、男二人を拘束する。
嗚呼、今日は良い酒が呑めそうだ––––。