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威 風 堂 々【文豪ストレイドッグス】R18

第14章 明くる日の戦士たち





「異能力––––【独歩吟客】!」



国木田がそう吼えた途端……
彼の持っていた手帳のページがぐにゃりと飴細工のように歪んだ。



異能力を発動する際 特有の碧色の文字帯が、国木田の手先……手帳の紙片にまとわりつく。




「《鉄線銃》!」

その光の帯が晴れれば、その手には紙片はなく、代わりに銀色をした鉄線銃が握られていた。




これが国木田独歩の異能力。

【独歩吟客】。


自らの保持する手帳のページよりも小さいもの、制限なしの万物を顕現させる。

しかし、自分が一度目にしたものに限る。



銃口から鉄線が噴き出して、主犯の方へと鉤爪を伸ばすワイヤー。

「チィ……!」

しかし、男が一瞬 振り向いたかと思うと、手をこちらへと向けてきた。



「な––––」

「罠だ独歩」


その手首には、ばね仕掛けの投擲ボウが挟み込まれたバンド。

キンッと金属音を立てて真綿が自身の得物を持ち、すぐさま打ち落とした。

スカルペスではなく、"今の"真綿の得物は小太刀だった。




数年前の真綿が、医療器具であったスカルペスを


得物として活用していたのは……

仕えていたあるじが、森が医者だったから。




「ほお……意外にも、貴様らは用意周到と見たが?」

「く、人が多い……!」


投擲ボウに弾かれた鉄線が、敢え無く国木田の元に引き戻ってきた。



先の騒ぎで野次馬が多い、それが意味するのは…

あの泥棒たちも自分たちもうまく前へ進めないことだ。




「このままでは」

「ふむん……」


真綿が何かを思案し、鞘に収めたままの小太刀に手を掛けた。



「殺さねば良いのだったね」

「嗚呼、そうだ」



ならば。



小さく紡ぐは殺戮を始めるための祝詞。

奏上されしは彼女のための闘争開始の鐘。


抜き身で真剣を使えなくとも、打破してみせるのが真綿の常套。



真綿が音を立てずにすり足で腰を落とす。

抜打ちの体勢、鞘入りしたままの小太刀を腰の側面に構える。




「…疎影 横斜し、水 清浅……

暗香 浮動し、月 黄昏…」


その口から奏でられた言葉が、碧色の文字帯となり真綿にまとわりついた。





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