第14章 明くる日の戦士たち
走る。走る。走る。
国木田が走る速度を上げつつ、手にした手帳を開く。
そんな彼の隣には、怪我の痛みなど少しも響いていないような
気配ごと自らを遮断する真綿が駆けていた。
人々の視界の隅で金色が疾風の如き速さで過ぎり
どこぞの紳士の瞳のような…深い紺碧の、目にするのも何だか曖昧なものが駆け抜けた。
「まさか、その場で目撃してしまうとはな」
「全くさね……」
騒々しくなるヨコハマのお昼前。
国木田と真綿は、例の宝飾店騒ぎに立ち会っていた。
偶然の奇跡で、だ。
「おぉ、かなりの健脚よな」
「体育会系か?」
「だろうさ」
逃走したのは二人、主犯と囮だろう。
あとあと合流されてはまた散られるだろうし、この辺りで捕縛しておきたかった。
足音がわずかに聞こえる程度の軽量ぶりで走る真綿と、
一直線に二人へと突っ走る国木田。
片や豹、片や獅子のようだった。
「チ、埒が明かん」
国木田が零した舌打ちと共に、その手が『理想』と大きく書かれた手帳に伸びる。
開けたページに万年筆で何やら書き込み、
そのまますうっと息を吸い込んだ––––
「異能力––––【独歩吟客】!」