第13章 蹌踉めく唇を重ねて
「オイ三島……何とかしろよ…」
「嗚呼……了解だよ」
唯一この口喧嘩を傍観に徹する三島を、
中也がつついて頼む。
「お二人方、喧嘩するほど仲がいいのは勿論良いけれど」
三島が穏和に微笑んでそう言うと
「「良くない!」」
と口を揃えて幹部二人が、またその事にも睨み合う。
そしてまた水掛け論を繰り広げんばかりの殺気を飛ばす。
しかし三島はそれに聡く気付きながらも、
敢えての穏和にして紳士主義だ。
「ただ、首領の前で見苦しいのはあまり良くないかもだ。」
三島に、しかも包帯ぐるぐるである彼に言われると、なぜか『とても悪いことをしている気分』になる。
自然と2人の怒気は蒸発していった。
「……慈悲を。」
「……すまぬ」
……まあ、2人とも互いに謝るのではなく
あくまで森と三島に対しての態度に収まったが。
「……却説…、お二方の気が落ち着いたところで…
首領、本題を。」
「嗚呼」
腕を組み 顎を乗せた森が、それぞれの部下に資料を渡し
幹部たちに行き渡らせる。
「今回の一連のミミック事件で、幹部級が2人殉死、1人は失踪ときた。
これに乗じて他の支部から脱走者が出てしまってね––––」
森の顔がなんとなく疲れていたのは、それか。
勝手にマフィアを裏切ったその支部の1人が、
機密でも持ち出したのか……
「ふむ、事態は了承した。
ここにいる彼ら、勿論僕も早急に処理を進めるが––––」
三島がその濃紺の瞳が、資料の文面を見つめる。
言葉を発しなくなった三島を見てか、
紅葉が続くであろう言葉を口にする……
「その謀反者は、一体 どこに逃げたのじゃ?」
森は曖昧に笑い、幹部たちが事の厄介さを悟った。