第12章 孤独の剣士との因果
「なあ、貴様。
福沢殿。
…妾とともに生きる覚悟があるのかや」
福沢の救済に
しかし真綿が驚くことはなかった……
昔からまったく同じことを言ってきた。
けれども結局……
最後の最後まで、自分と添い遂げられた者などいないと
その目は悲しいほどに語りかける。
約束はずっと果たされぬまま、
この暗殺者は孤独に待ち続けた。
自分の意に沿うことはなく
ずっと。
「妾に魅入られた貴様の運命を、
妾に託してくれるか」
その文言を、いったい、どれだけの人に言ってきたのか。
孤独に生き続けたなら
人間の温かみなど、とうに失ったに違いない。
枯渇した真綿のこころに焚べる薪が、『殺戮』というのなら。
「では、此方からの条件だ。
私たちと共に、来てくれるのならば……
貴公の運命、この身が預ろう」
福沢が真綿の手を取った。
華奢で小さくて、ナイフを振るうには似合わない、女の子の指先。
「…そうか」
真綿がふと笑った。
「そう、か」
そのまま、うっとりと目を閉じた。
手のひらに感じた、人間の体温。
望めばいつだってそれは自分の手中に入って来た。
「福沢殿。あるじ殿。
いいではないか。
ま、一度 失敗した身で またあるじ殿を得るというのも
贅沢なものだな……」
そうだと思うのなら、福沢に尽くすまで……
今度は絶対に、失敗しない。
「この身、この剣技、あるじ殿の御許に」
その命が尽きるまで、貴方の物と成りましょう。
「……ちなみに、妾に『殿』など付けては格好がつかない故な。
普通に呼び捨ててくれないかや」
「う、うむ。」