第12章 孤独の剣士との因果
「貴公は暗殺面で色事にも手を染め、必要ならば
どのような殿方とでも肌を合わせるとは聞いていたが–––––」
困惑と驚愕の混じる美貌は、薄っすらと赤いようにも見えた。
こちらの表情の方が、いつもの凛々しい顔よりも
年相応に似合っていて可愛らしい____福沢は素直にそう思った。
ただ、そんな露骨な口説き文句に落ちるほど 花房真綿は乙女ではないことも判っていた。
「……不意打ちは苦手か?」
そう少々 意地悪げに微笑んだ福沢に
真綿が「いけしゃあしゃあと……」と呟いた。
それは福沢自身も理解していた。
だが、不意打ちだったとはいえ
卑怯な手管の運び方ではなかったはずだ。
実際問題、自分の立場に真綿がいたのなら
もっともっと上手くやっているのだろう。
こんなその場限りの手が使えたのは、不覚にも真綿が情に厚くなっていたから。
素人がすれば逆に手玉に取られ、舌を出して絡めれば毒を塗り込まれていたのだろう。
「その剣技、見事だった。」
「福沢殿……、ちょっと暫くは貴様を許さない…
いや、許すとて何を許すのか判らないが、とにかく何かは許さない!」
激昂した彼女を立ち上がらせ、傷が開いていないかを手早く確認した。
大丈夫そうだった。
真綿が 自分の限界に気付かない訳もないのだし、
傷が開いたら即、戦いをやめていただろう。
「却説、真綿殿。
私の提案に乗る気はないか?」
人が悪い、そんなのは福沢も自覚あった。
「……提案次第だっ!」
顔を背けた彼女は、怒っていた。
否、怒っているとはちょっと違うか……
「私と乱歩と共に……
異能力者を、救わないか」